片翼

 

その噂を耳にしたとき
感じたのは諦めのような、淋しさだけだった己の為だけの、焦燥感

あの男と剣を交える時だけ血が滾るほど心が騒いだ

もう1度だけあの感覚を自分の内で味わいたかった

しかしそれはもう2度と

叶わない

 

「ケリ着けたいならいくらでも相手になるぜ?」

 

―――翔べるのか?

それでもまだ翔ぶことをやめないのか?

片翼でも

おまえからはその輝きも気高さも失われることなく

以前と少しも変わることなく―――飛び立てるというのか

 

「勝負など―――もはや無益」

「じゃあ何でここへ来た」

「―――確かめたかったのだ」

おまえがその翼をもがれても尚
飛ぶことをやめないかを

どんな顔で、笑うのかを・・・・・

この目で確かめたかった

 

そう―――・・・・

 

「それでも貴様はそうやって、笑うのだな」

「哀しいことなんか何一つないからさ」

 

 

「片腕の代償は何だ」

 

 

赤髪はより一層不敵に微笑む

 

 

「海賊王の命」

 

 

だから後悔などしていない

哀れみの言葉も、同情の眼差しも必要ないと―――

おまえの快楽の為に
あの左腕があったわけじゃないと

全てを見透かすような、そんな眼だった

 

「そうか」

 

それでもこの胸に去来する
やり場のない喪失感を拭い去ることは出来ない

 

「邪魔したな」

「鷹の目」

「なんだ」

「逢えるさ、おまえを愉しませてくれるヤツに―――いつか必ず」

この男なりの慰めか

いや、これこそ同情だろうか

 

「そう、願いたいものだ」

 

もう1度あの、至福に近い戦慄を味わえるというのなら

このおれを超え、大剣豪という野望を掲げる男に

いつか出逢えるというのなら―――・・・・

 

待とうではないか

この、最強の座にて――――

 

 

 

-END-

 

 

 

突発的衝動的短絡的に出来上がりました
(スイマセン、ホント)

シャンクスとミホークって、シャンクスの性格の所為か
不思議で微妙な関係だよなと常々思ってますが
そうは言っても、本気カップリングにはどうしても結びつかないので
そういったのを抜きで読んで頂けると有り難いです
(説得力ないけど/笑)

ライバルというよりかは悪友というか腐れ縁というか。

早い話がこういう関係にも弱かったりします

up 2002/08/01